マナビラボ

第6回 マナビをひらく!授業のひみつ

2016.01.27

大きな視野を持つ学び
―細やかな問いかけで思考を促す―
【後編】

――今回の授業では、どのようなことに配慮されていたのでしょうか

林先生:農業も、ある段階から商業化したことです。前回までは自然地理が中心でした。今回から人文地理の内容に入ります。地理は、人びとの生活や営みから自然環境や歴史、文化などの自然条件や社会条件を考え、そうなった要因を整理する必要があることを理解してもらいたいです。今回は、そんなことも伝えたくて歴史とリンクする形で授業を作りました。今回の授業は発問が多い授業でしたが、授業の形としては、他にも例えば30分程度のグループワークを取り入れる授業などがあります。

 

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――授業中はどのようなことに目を配っていらっしゃいますか

林先生:一番は生徒が主体的に学習しているか、ということです。待っていれば誰かが答えを言ってくれるというのではなく、考え学び合うことができているか、です。机間巡視しながら、資料集のどこを見ているか、また話し合いの内容はいい方向かなどをポイントに生徒の動きやグループワークの様子を見ています。やり取りの中で、わかっているところとわかっていないところをはっきりさせます。友達同士で答えを言い合うのも、学び合いを意識させるためです。もちろん、クラスや状況によって質問は変わってきます。

 

――細やかな問いかけが印象的でした。事前に準備されるのでしょうか。

林先生:5年ほど前、このスタイルを始めた当初は全部準備していました。しかし、そのせいで予定外のことが起こると変な方向に進んでうまく目的に届かないことが起こりがちでした。今は「この授業で何を伝えるか」というベースを自分の中で持ちながら、時間の制約などもありますが、ファシリテーターであるということを意識して、その場で考えて質問をしています。授業中は考えさせたいので暗記などは生徒に任せています。

 

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――発問ではどのようなことを意識しているのでしょうか。

林先生:生徒の頭の中には、単元ごと教科ごとに知識が入っていることが多いです。すこし時間はかかりますが既にある知識を活用したり学び方を学ぶような発問を心掛けています。そのため他教科や中学校での学習内容にも目を通し、地理の内容と関連させることができるようにあらかじめ勉強しています。発問は大別して、①前回授業の復習・宿題の答え合わせ、②これまでの知識の確認、③知識活用力・論理的思考力・考察力を育むための発問、の3パターンで考えています。

 

――生徒の方の反応はいかがでしょうか。

林先生:4月から徐々にいろいろな経験をさせて、2学期に入ってからグループワークがうまくいくことが増えてきました。特定の生徒が発言しているわけではなく皆で教え合いをすることなどが定着してきて、考えの深まりという意味ではかなり求めていることが伝わってきたように思います。

グループワークの目的の一つに、仲間づくりもあります。普段それほど親しいわけではないクラスメイトとも、授業の中では話し合おう、と。定期的に席替えをして、グループを作っています。3人から4人が基本です。それ以上になると話さなくて済む生徒が出てしまうので。

 

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――グループワークを取り入れたことでなにか問題はありましたか。

林先生:いいことはあっても悪いことは特にありません。暗記じゃない部分の問題も解けるからだろうな、と思います。論述も、思ったよりは書いてくれますし、少なくとも書こうとはしてくれます。暗記だけではなく文章の中で表現しようとしているのがわかります。あまりできない生徒の成績がよくなるだけではなく、よくできる生徒もさらによくなると感じています。特に、4月には「社会科は暗記だ」と思っていた生徒が、「やっぱりここはこう考えなあかんよな」と考え始めたときが、一番よかったと思います。

 

――授業を通して生徒に期待することはなんでしょうか。

林先生:これからよりグローバルな世の中で生きていく必要があります。その中で社会貢献し活躍していける人材に育ってほしいですね。よって点数だけではない力もつけられるように、またそれがどんな力かを授業で体感できるように心がけています。

 

――具体的にはどのような力をお考えでしょうか。

林先生:メインは知識活用能力と論理的思考力です。知識を入れるインプットと発信力としてのアウトプットの間に、知識活用能力や論理的思考力があると考えています。グローバルと言いましたが、変わっていくシステムを自分の思うように導ける、社会貢献ができるような力です。キャリア教育的視点への意識は強いです。授業もキャリア教育の一部です。

最近「目に見える学力」「目に見えにくい学力」「目に見えない学力」を意識しています。知識技能や偏差値等目に見える学力でなく、見えにくい学力や見えない学力を大きくすると見える学力が大きくなるというものです。見えにくい、見えない学力がアクティブラーニング型授業やキャリア教育で育むべきことではと考えています。結果として見える学力の力もつくと素敵ではないかと。教師がこの授業の中では○○力をつけるという意図を持っていることが重要です。

 

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――どのようにして授業スタイルを作っていったのでしょうか。

林先生:学校内外のいろいろな方から教えてもらったことが大きいです。研究会に参加したり、研究会を運営するなど、自分のネットワークの中で得た情報からできることをやっていった。できることからやってみることが大きいです。自分でやってみて得たものが積み重なっていっている形です。目的が明確であることも大切です。

最近のアクティブラーニングに関する流れには、やや不安を感じます。すべては「生徒のために」を軸足にして活動すべきだし、「不易流行」を考えて、情報を取捨選択して自分のものをつくっていくことが重要であると考えています。

 

――うれしい場面というのはありますか。

林先生:生徒から自分の考えている以上の答えが出てきたとき、今までにない視点が出てきたときにはやはりうれしいですね。「よし!」という感じです。生徒には僕の枠を飛び越えて、飛びぬけていってほしい。あとは、生徒の目指していることと僕の目指していることが一致しているときです。「学力・学ぶ力・考える力・学び合う力」の4つの向上を目指していて、それを生徒にも4月の初めの授業で言っていたのですが、生徒が具体的にこれを求めて勉強し始めるとうれしいですね。

 

 

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三重県立津東高等学校は、津市に所在する公立普通科高等学校。「向学立志」を校是に、地域における進学校としての意欲、知識、思考力等を育むこと、自立・進取の気概を持って共に学び、共に成長し合える風土のある学校を目指している。

  • 取材

    堤 ひろゆき

  • 撮影

    山辺 恵理子

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