マナビラボ

第50回

2018.08.22

17歳の「知ってる」の世界

後編

山梨学院高等学校の鳥居英之先生は、生徒たちの体験・実感を基礎とした「知ってる」を大切にしている。附属学校の強みを活かした授業をデザインする中でも、生徒たちの「知ってる」が大前提。とはいえ、17歳の「知ってる」って・・・?

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附属学校間でのつながりについて教えて下さい。

鳥居先生:アクティブラーニング(以下、AL)という点からすれば、(附属の)中学校までは、比較的AL的なことをしてきているのだと思います。でも、高校になると大学受験がありますからね。・・・でも、今日の進学コースの生徒たちは、基本的に外から来た子たちなので、ALに慣れているかというと、ちょっと事情は違うかもしれません。

今日の授業の最後に「◯◯部の先輩はこういうことやってたよね」というふうに、大学入試を意識したコメントしました。生徒たちは年に6回山梨学院大学・短期大学の6学科の授業を体験しています。その際、大学側にお願いしているのが、進学コースの卒業生に各学部のプレゼンテーションをしてもらう、ということです。だから、今日発表した生徒たちは、1年生のときの3年生が大学生としてプレゼンテーションしているのをすでに見てきているんです。そういうこともあり、多少自分たちなりに発表のイメージができていたのかな。

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大学とのつながりを活かした授業がデザインされているのですね。

鳥居先生:まさに高大連携を構築している最中なんです。高大連携というキーワードが文科省から提示されてから、高大連携の一環として、総合の時間に、うちの生徒たちが大学で授業を受ける機会をつくれないものか模索してきました。この前も、大学の先生方と会議をしてきたところです。そこでは、あえて高校の側からリクエストをさせてもらっています。たとえば、高校1年生は、ついこの前まで中学生で、大学がどんなところかわかってもらおうと言っても限界があるので、学生にプレゼンテーションをしてもらったり、体験型の授業を中心にしてもらったりすることで、大学を身近にかんじてもらえるように。高校2年生では、2回目なので進路が見えてこないといけないので、体験だけでなく講義型も織り交ぜて、この学部ではこういうことをするんだというのがわかるように。また、高校3年生については、10月以降はだいたいの大会も終わり部活動も落ち着くので、毎週金曜日を高校に来ないで、大学の方で授業を受けられる日にしています。大学の授業の先取りというかんじです。これはちょうど1年前からはじめたんですよ。

高大連携については、戦略的なところもあります。他所と比べると、特殊な部分もあるかもしれません。たとえば、東京にある大学附属の高校なら、大学の先生の出前授業というのが一般的だと思います。うちも最初の構想は、高校での出前授業でした。でもそれは、リアルじゃないですよね。うちは、(高校も大学も)同じ駅で降りて、北側と南側に分かれるだけで、通学定期の区間も変わりません。よりリアルを求めるなら、大学で授業を受けさせたい、と思い、実施される1年前から交渉してきました。

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今回の授業では、電子黒板や書画カメラ、スマホなどのICTが取り入れられていましたが…。

鳥居先生:今日の授業は、自分で調べる、自分で発表するというかたちを基本に組み立てました。あれこれ考え、内容としては生徒たちにとって「リアリティー」のあるものから入るのがよいと思いました。身近に入れる題材というのが、修学旅行だったんです。発表の練習はもう少し必要だったかもしれませんが、時間数のことも考え、事前学習もしていて、実際に行った修学旅行、という題材を深めることにしました。

調べるときに限って、今回の授業ではスマホの使用を許可したのですが、生徒たちが発表のときにもスマホに保存した画像を使うとは思っていませんでした。画像を投影するならコネクタを使うとかもっとよい方法があるのですが、発表のアシスタントをした生徒たちは、発表内容に合わせてスマホに画像を保存して準備していたんです。

もちろん、マナーやネチケット、リテラシーなどスマホを使用させるうえでの留意点は多々ありますが、彼らにとってスマホは、彼らの手許にある生活の完全なツールなんです。生活のツールとなっているスマホをどう活用させるか、彼らが普段どう使っているのか、これを受け入れることも大事だと思っています。学校としてICTをどこまで導入するのか、それに教員がついていけるのかなど、ICTについてはいろいろと課題があります。いろんなICTがあるし、いろんなソフトもでてきている中で、学校や教室の条件、授業の目的に合わせて、何を使うのか選ぶことがきっと重要なのだと思います。

修学旅行の事後学習をAL的なかたちにしてみようと思って取り組んだ授業だったのですが、生徒たちにとっては、自分たちの理解がはまっていたり、クラスの中で共感・共有できていたりもしたので、知らない人物のことを調べたりするよりも、「知ってる」を改めて調べて深めたことは、よかったのかなと思いました。


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今後の課題について教えて下さい。

鳥居先生:同じ題材について言えば、もう少しお膳立てをどうにかできたかな、と思いますね。また、他の題材に変えたときにどうなるかな、と思っています。つまり、修学旅行くらいの体験・実感のないものでどこまでできるか。たとえば、環境問題を調べよう、というのはどういうふうにできるのか。生徒たちにとって「リアリティー」があるかないかでかなり違うんです。彼らにとっての「知らない」からではなく、「知ってる」から、彼らの「リアリティー」にどう踏み込めるのか、ですね。

生徒たちにとっての「リアリティー」にこだわるのは、当たり前のことですが、彼らが現実の中で生きているからです。学問を深めていくということは、身近だけどあんまり知らないことを深めていくことで、スマホが普及した時代に生きる彼らにとって興味というのは、つまり、彼らの知識の掘り口というのは「知ってる」なんだと思います。

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-生徒たちの体験・実感を基礎として、生徒たちの進路意識にはたらきかけたり、生徒の「知ってる」から学びを深めさせたり・・・17歳の「知ってる」の世界に向き合う鳥居先生の姿を垣間見ることができました。

本日は、ありがとうございました。

 

 

08058545 (1)1946年山梨実践女子高等学校として創立して、1962年に山梨学院大学附属高等学校と校名を変更。2016年に山梨学院高等学校に校名を変更し現在に至る。「品格品性に富む豊かな心を涵養し、気魄をもって広く世界に知を求め、輝かしい未来を拓くたくましい人材の育成」を建学の精神として掲げ、山梨学院大学・山梨学院短期大学への進学だけでなく、国内・海外の大学への進学にも力を入れている。

  • 取材

    町支 大祐

  • 取材

    渡邉 優子

  • 撮影

    町支 大祐

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