マナビラボ

第8回

2018.01.03

校長先生のマナビの場探訪 ~北村局長にうかがいました~

後編

校長先生ってどうやって学んでいるの?校長先生ってどうやって力をつけているの?そんな関心から始まった「“校長先生のマナビの場”探訪」 第一回目は北海道教育庁様の校長研修にお邪魔してきました。
後編である今回は、前回お伝えした校長研修(http://manabilab.jp/article/4223)について、企画およびファシリテーターを務められた北海道教育庁学校教育局北村善春局長とラボ長 中原、ラボメンバー 町支との対談についてお伝えします。

 

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◆◆◆

校長先生にとって必要な力 “通訳力”

中原:北村局長、こんにちは。今回は校長研修について取材させていただきましてありがとうございます。まず今回の研修についてですが、研修全体の構成を教えていただけますか。

北村局長:今回の新任校長研修会は、全体として2日間の日程で行っています。学校経営のマネジメント、学校における危機管理やメンタルヘルス、服務と人事管理、予算と財務管理などが組まれており、取材していただいた研修は、最終プログラムである「地域の信頼に応える学校経営の在り方」をテーマにしたものです。

中原:今回見せていただいた研修(http://manabilab.jp/article/4223)は、どんな狙いがあっておこなわれているのですか?

北村局長:今回は、『社会に開かれた教育課程』をどのように実現するか、という点を自分たちで考えてみるところがポイントになります。私自身は、社会に開かれた教育課程というものが、単に地域と連携して協力してもらってお手伝いにきてもらったらいいとか、そういうレベルの話じゃないということを伝えたいと思っています。教育の狙いとするところを地域と共有して、当事者になってもらうということです。
そして、そのためには、学校側がどこに課題意識を持っていて、その課題を解決するためにどんなリソースを使うか、外のリソースは何を使うかっていう、そのデザインを内外に示す力が経営者には求められるということです。

中原:なるほど、確かにその点は重要そうですね。それに関わって先生が “通訳”というキーワードを使っておられたことが印象にのこりました。「制度」をただ単に受け止めるのではなく、学校の状況やビジョンに合わせて「自分ごととして解釈し直して伝えることが大事」という話がありました。

北村局長: 重要です。私はその力を“通訳力”と呼んでいます。

中原:私も『駆け出しマネジャーの成長論』というビジネス書に書いているのですが、一番キーになるのは目標の咀嚼っていう、さっき先生がおっしゃった通訳力なんです。だから、この点でいくと企業も多分、校長先生と変わんなくて、上からいろんなものが落ちてくることを、この人たちに分かりやすくどう伝えるか。いかに決めるかっていう話なんですね。

北村局長:それと関連するかもしれませんが、私は1回教員辞めているんですよね。30歳で父が経営する会社に入社したんですよ。そのときに、取引先の方たちから「教員あがりの人なんか請求書一つ書けないだろう」とか言われるわけです。

中原:それは大変な経験でしたね。お察しいたします(笑)。

 

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北村局長:はい、大変でしたね(笑)。ただ、それでも、自分できちんと仕事をしていかなければならないし、従業員の皆さんが仕事をしやすくしなければならないわけで、勉強しましたね。会社経営に携わると、いつまでとか、不良率を下げるとか、納期を守るとか。そういうことを、マネジメントしていかなきゃいけないですよね。そうすると、「自分の考えとか会社のビジョンを伝える」っていうことと、もう一つは、「取引先などの相手から正確に聞き取ること」ができないと仕事ができないですよね。そういう経験をしたところが一つ大きかったな、と思っています。

中原:なるほど、そういったご経験が先生の考えの背景にあるわけですね。

北村局長:そうです。だからこそ、翻訳する。自分で話を聞いて、考えて、自分の言葉で語ることを私自身大切にしたいと思っていますし、経営者である校長先生たちにはそうあってほしいと考えています。

校長先生にとっての「学びの場」とは

町支:少し話は変わりますが、私たちマナビラボでは校長先生向けの研修を開発しています。それにかかわることを少しうかがわせてください。管理職の学びと教職員の学びとでは、どういったところが一番違うと思いますか。

北村局長:比較的、教職員の研修の方が日常の変化につながりやすいところがあるかと思います。「明日帰って授業どうやろう」とかって、実践しやすいじゃないですか。でも、校長が学校に帰って、「明日経営のここ変えよう」とはなりにくいんですよね。経営環境がいろいろあるので、これ言ったとき誰が動くかなとか、あそこは協力してくれないんじゃないかなって考える観点がいっぱいあるので、二の足を踏むっていう傾向はあるような気はします。

 

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町支:それは何故なんでしょうか。

北村局長:学校を取り巻く様々な環境の中で、多くの教育課題の改善に取り組む校長にとっては、その改善が、時には高いハードルに思えて、「地域がうんと言ってくれない」とか、「自分だけでは何ともしようがない」というような、できない理由探しのような意識につながりやすいんじゃないかと感じています。私も、そう考えたことがなかったわけではありません。

町支:なるほど。そういう理由があるわけですね。

北村局長:そうです。だからこそ、私は、気を引き締めてほしいんですよね。職が変わったんだよと気づいて欲しい。全く今までとは違うことにも気付いてほしい。
私自身は、校長として一番最初に決裁した時のこと覚えてますよ。校長が決済するときに押印する欄って、書類の一番左側なんですね。教頭のころって、自分の押印欄の次に校長の欄があるから、自分の押した後にまだ判断してくれる人がいるんですよね。でも、校長になったらいないんですよ、もう。ちょっとした決裁だったと思いますけど、しばらく考えました。押していいか、本当にこれでいいのかって。責任を取るってそういうことですよ。だから、決められるのは校長しかいないんだ、と。言い方を変えれば、物事を変えられるのも最後は校長しかいないんだという、そういう覚悟をもってやってほしいんです。

町支:そこに気づいてもらう、その覚悟をしてもらうということが、北村局長にとっての、校長研修の大きなポイントになっているわけですね。

北村局長:そうです。今日も社会に開かれた教育課程の話の中で「教育、あんまり分からない人(例えば地域の人)にいろいろ言われるのもちょっとね」と言っていた校長もいました。私は、校長はその地域の教育はこうあるべきじゃないでしょうかっていうものを、むしろ発信する立場だと考えています。発信したことに対して、はじめて向こう側から言葉が返ってくるわけです。地域から何か言われたくないっていうふうなことではなく、自ら伝えていく側なんですよ、是非そういう意識を持ってほしいです。

町支:なるほど。校長先生たちにそう変わってほしいからこそ、研修のなかでも、ワークや対話などアウトプットする場面を重視されていたわけですね。大変勉強になりました。
今回は貴重な機会をいただきましてありがとうございました。

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  • 取材

    中原 淳

  • 取材

    町支 大祐

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