マナビラボ

第7回

2017.12.27

校長先生のマナビの場探訪 北海道教育庁編

前編

校長先生ってどうやって学んでいるの?校長先生ってどうやって力をつけているの?そんな関心から始まった「“校長先生のマナビの場”探訪」 第一回目は北海道教育庁様の校長研修にお邪魔してきました。
本年度5月に行われた新任校長研修会について報告します。

◆◆◆

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5月某日、札幌市内のビルの一室に集まったのは、北海道における公立高等学校50名強の新任の校長先生たち。この研修会は、大きく3つのセッションで構成されていました。最初のセッションはまず、動画を見ることから始まりました。

 

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(動画はyoutubeで公開されています) https://www.youtube.com/watch?v=w-tFdreZB94

 

この動画は、マイクロソフト社から2015年に公開された“Productivity Future Vision“というもので、5〜10年後の”未来の働き方“を表現したものです。動画視聴後には、日本マイクロソフト社(東京都港区)の文教本部長から、テレビ会議を通じて、動画の内容などについて解説が行われました。動画と解説が一通り終わったあと、ファシリテーターをつとめる北村局長は、校長先生たちにこう問いかけました。

“みなさん、今ご覧になった動画のように世の中が変わっていくことなどについて、普段、ご自分の仕事と関連付けて、どれぐらい意識されていますか?”
“今日のテーマでもある「社会に開かれた教育課程」を考える際に、その「社会」が、今後どのように変わっていくのだろうかということについて、勤務校の先生方はどのような認識を持っておられますか?
“今ご覧になった動画のような世界に生徒達は出ていくわけですが、先生達の学校では、生徒に、こういう社会で生きていくための力をつけなければならないという意識で教育が行われていますか?”

 

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この動画を通じた北村局長のメッセージは、「校長先生たちに社会に対するアンテナをできるだけたくさん持っていてほしい」ということでした。まずは、社会が求めている力と学校でつけようとしている力とは、どこが同じでどこが違うのか、そこについての自分なりの分析とそれを生かした学校経営に関する考え方を持つことが、「社会に開かれた教育課程」を編成する際の出発点になるということを強調して、第1セッションが終わりました。

第2セッションはワークショップです。タイトルは、「社会に開かれた教育課程を実現する学校経営をどう進めるか」です。最初の問いは、「校長着任後の挨拶先」。まずは個人で考え、グループでシェアし、それをタブレットに打ち込んで行きます。その結果が、リアルタイムに前方のスクリーンに共有されていきます。

 

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集約された情報をみると、挨拶先はどのグループでも行政関連などが中心で、似通っているように見えました。そこにすかさず北村局長が切り込んでいきます。

“みなさん、どこに挨拶に行くのかを固定観念や、前例踏襲で考えていませんか?「こういう生徒を育てたいから、こういう教育を行うために、こことつながりたい」というような視点で考えたことはありますか?”

この問いかけと揺さぶりを経て、ワークショップは次の段階に移行します。「自校の地域連携の実態と課題」「どういう連携が必要なのか」、「そのためにはどうしていけばいいのか」。これからの学校経営の方向性を考えていく中で、校長先生達の話がより具体的になり、熱を帯びていきます。

 

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「地域と学校の温度差」、「地域のニーズを聞く機会の必要性」、「日常的な関係性を築く大切さ」、そういったものが、それぞれの校長先生自身の言葉で語られていきます。最後に、グループ毎に改善方策を実現するためのアクションプランをまとめ、全体でシェアリングすることでワークショップは終了しました。

第3セッションは北村局長からのラップアップです。

 

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まずは、「社会に開かれた教育課程」の実践事例が紹介されました。そして、それがどういう意味を持つのか、について北村局長が問いかけます。

“「生徒が、学校も含めた社会の中で、様々な人と関わりながら学んでいく。その学びを通じて、自分の存在が他人から認められる。自分の行動や活動によって、少しかもしれないが、社会がポジティブに変わっていく。」そういうことを実感した子供たちは、そのあとの人生においても主体的に世の中に関わっていこうとする意欲を持てるのではないでしょうか?学校は、社会的意識や積極性を持った子供たちを育成する場だと思うのです。”

“これらの取組は、学校の中に閉じこもっていては出来ません。社会や地域等と一緒になっていかないと出来ません。そのためには、学校は、地域と一緒になって「どのような生徒を育てたいか」「どのような教育が必要なのか」を語り合い、教育の目的や目標を共有すること。それから、「なぜ社会や地域と一緒になって教育を行う必要があるのか」などを語っていくことが重要です。よりよい学校教育を通じて、よりよい社会を作るという目標を学校と社会が共有することが、求められているのです。”

北村局長はそれを「自分自身の言葉で語ること」の重要性について強調します。

“そして、その際には、誰にでもわかる表現で、校長先生たち自身の言葉で語ってください。学習指導要領改訂や行政施策の説明だけでは不十分です。「なぜ行うのか」「誰のために行うのか」「その行きつく先の姿は、どのようなイメージか」「そして、どのような手立てで行うのか」といったことを明確にした学校経営の考え方を示せなければ、学校の先生達は動けませんし、地域を巻き込むことなどできません。自分の熱い経営方針と具体の方策を自分の言葉で語ってこそ、人を動かせます。これこそ校長先生たちがやっていくべきことであり、組織を動かしていく、ということなのではないですか?”

近年の教育改革や社会の動向をふまえると、学校現場で新しく取り組んでいかなければならないことや、考えなければならないことは多いと思われます。背景等も含めて施策などを解釈し、翻訳して、自分の言葉で伝えることで、はじめて学校や地域を動かしていけること、その実現に向け社会に対してアンテナをはっていくことなどについての重要性を改めて強調し、北村局長からのラップアップは終了しました。

 

◆◆◆

 

終了後、3名の校長先生に、研修についての感想をうかがいました。

町支 : まずは研修の感想を教えてください

佐藤雅人校長先生(苫前商業高等学校) : 私は商業で情報の免許も持っているのですけれど、今まで考えていた以上に時代は進んでいるのだなという実感を持ちました。ただ、それを、今うちの学校にどう取り入れていくのかについては、これからじっくり考えていきたいなと思っています。

町支 : なるほど。先生はいかがですか?

合浦英則校長先生(夕張高等学校) : 私も、時代が大きく変わっているという認識を持ちました。また、その認識をここで共通して持つことにも意味があると感じました。先を見据えつつ、それぞれの場でみんなが何をやっていくかを考える良い機会になったと思います。

町支 : 先生方のお話をふまえますと、学校はこれまで長く変わってこなかったということになるでしょうか。

合浦校長先生 : いえ、時代に合わせて学校も変わってきましたが、時代がより一層急激に変化している一方、学校の変革のスピードは前と変わっていません。差がどんどん開いてしまっている、という認識をもっています。その前提で自分たちの仕事を考えていく必要があると感じました。

町支 : なるほど、そういうことですね。吉田先生はどんな感想をもたれましたか?

吉田光利校長先生(幕別高等学校) : 時代の変化はすごいなと思いました。ただ、最先端のテクノロジーの世界であるということを冷静に見る必要があると感じました。技術が進めば進むほど、学校現場との格差がうまれているとも感じました。まず、その格差を認識し変化に対応することも大切ですが、一方で「変わらないもの」の中にある良いものも見据えていきたいと思います。

合浦校長先生 : 吉田校長先生がおっしゃった通りで、時代がどんどん変わって、子供達がそういう世界に出て行くことを認識していく必要があると感じた一方で、情報をただただ受け止め、受け入れるだけでなく、その情報を解釈できるような力も必要だと感じています。学校でやれる時間と内容は限られているので、何をやっていくべきか、どんな力を育てたいか、しっかり考えていきたいと思います。

町支 : 「どんな力を育てたいか」というところですよね。研修中も北村先生が強調されていたポイントですね。

吉田校長先生 : それも含めてですが、世の中があのように変わっていくということを知れたということは大きな意味があったと思います。それをそのまま学校に取り入れていくとか、学校がすぐにそうなっていく、ということではないですが、変化を知りつつ自分たちが何を重視してやっていくか、それをきちんと考えていきたいなと思いました。

 

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町支 : ありがとうございます。では、今日の研修で学んだなかで、最も大事だなと思った部分はどこですか?

合浦校長先生 : 私たちが通常行っている業務や仕事について、その意味をちゃんと考えているのだろうか、というところが問われているのだと思いました。ただただ前からやっていたから、というだけでやっていくのではなく、これまでやってきたこと、これからやりたいことを、社会の変化との関係で考え直す良い機会だったと思います。

町支 : 改めて考え直す機会になったということですね。それを考えるなかでもう少し具体的に感じたことなどはありますか?

合浦校長先生 : さきほど何をやっていくかが大事だという話もありましたが、全ての話を学校内で完結するのは難しいので、社会とつながって教育をしていかなければという議論になりました。今日は、それに自然に気づけたので良かった、と思います。

町支 : はい、ありがとうございます。吉田先生はいかがですか?

吉田校長先生 : 今日のワークショップは、学校に帰って理想の生徒像や学校像を考えたりする際にとても参考になると思います。みんなで頭をフル回転しながら、そして、それぞれ考えたことを見える化しながら、すすめたので、大変勉強になりました。

町支 : ワークショップの進め方の部分ですね。内容についてはいかがですか?

吉田校長先生 : 地域との関係で言えば、誰とつながっていくのか、ということによって、学校にもたらされる情報も、学校からの発信に対する反応も変わってくると思います。ですので、その辺りをしっかり考えていきたいと思いました。それから、「挨拶に行く」という意味でいうと、それはしっかり顔を合わせて話をする、という意味でもあるなと思いました。つながる先もそうですが、きちんとちゃんと直接会って話していくことの重要性も改めて感じました。

町支 : なるほど。「挨拶先」という問いからワークショップが始まりましたが、「挨拶」ということは、直接会って話をする相手ということになりますね。ありがとうございます。佐藤先生はいかがですか?

佐藤校長先生 : 北村局長の話を聞いて、今やっていることの意味について改めて考え直しました。今後やっていくことについてもしっかり考えたいですし、一方で、子どもたちが、頑張ってやっていることを認めてあげたいし大事にしていきたいという気持ちも改めて確認できました。

町支 : ありがとうございます。先生方にとって、あらためてこれまでのやり方を捉え直す、これから考えていくべきことが明確になるような機会だったということですね。今日は遅くまでありがとうございました。

先生方 : ありがとうございました。

◆◆◆

今回初めて校長先生の研修というものを観察させていただきました。勝手な想像では、校長研修とは、渋い顔でならぶ校長先生方を前に、識者の方が延々とレクチャーを行うようなものではないかと考えていました。しかし、今回取材させていただいた研修では、みなさん「前のめり」で学んでおられました。校長先生の学びに対するニーズはかなり高いことを感じました。
現在、マナビラボではスクールリーダーを対象とした研修を開発中です。そういったニーズにも答えられる研修を作っていきたいと思います。

来週の後編では、北村先生へのインタビューをお送りします。

 

※掲載した研修等についてのお問い合わせ先
北海道教育庁学校教育局 北村善春局長
℡ 011-231-7385(直通)
E-mail kitamura.yoshiharu@pref.hokkaido.lg.jp

  • 取材

    中原 淳

  • 取材

    町支 大祐

  • 撮影

    町支 大祐

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