マナビラボ

第39回

2017.10.25

イメージの共有で気付くアイデアの広がり方

後編

美術やデザインを専門的に学ぶ高等学校は、少なからずある。そんな中、美術やデザインを学ぶ生徒が課外活動で教師とともに制作した映画が、国際映画祭にノミネートされるほど高評価を得た学校が、宮城県仙台市にある東北生活文化大学高等学校である。今回は、その東北生活文化大学高等学校の美術・デザイン科、倉本郁哉先生の授業におじゃまして、生徒の学びの様子を取材した。

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―授業の手応えはいかがでしたか?

倉本先生:技術的なことを教えるのはできるのですが、なかなか発想方法を教えるというのは難しいところがあります。今回の授業はイメージから言葉、言葉からイメージへという表現を共有することでアイデアの生み出し方を伝えようとしました。発想の切り口になってくれればと思います。

 

―生徒の反応は?

倉本先生:素描、油絵、構成といった課題で、全体での講評会(人前で自分の作品を言語化して分析する形態の授業)ではあまり発言しないけれど、今日の小グループではするどい意見を言う子がいるなど、「まさか」という意外性がありました。

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―通常の授業でも言語化やグループワークを取り入れているのですか?

倉本先生:グループワークはデザインの授業で取り入れることが多いです。例えば、移動販売のクレープ屋さんをデザインするという機会があったのですが、車だけではなくメニューや巻紙なども含めてデザインしなければなりません。皆でつくることが不可欠なので、グループでの共有は必要です。その意味では、デザイン科で取り入れる機会が増えます。3年生になれば、卒業制作や卒業研究の授業に取り組む中で本気になり、グループワークの質も上がります。

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―美術コースでは?

倉本先生:美術で求められるのは、よい作品をつくることだけではありません。自分の言葉で説明できることも必要なんです。自分の作品を言語化して説明するときに、恥ずかしいという気持ちもあります。けれど、恥ずかしくないと思う表現もある。それを探すことが大切です。ですが、具体的なものを正確に描くという作品を制作する技術を学ぶという授業では、どうしても個々人の作業が中心になりがちです。

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―イメージや考えを言葉にすること、グループで共有することを意識的に取り入れているわけですね。

倉本先生:難関芸術大学を目指す生徒などもいますし、自分から動いていく生徒もいます。しかし、言葉にすることや、グループでの取り組みを重視するような授業がしっくりきてないな、という生徒もいます。そうした生徒も含めてどうすれば動き出すきっかけが作れるかということを考えています。生徒にとってモチベーションになるような、人生を変えていく動きというのは、生徒にとってリアルなものだと思います。それを出したいですね。課外活動で映画制作もするなどバリエーションは広がりますが、授業の中でもやっていきたい。

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―生徒にとってリアルなものを提示するというのがおもしろいです。

倉本先生:授業で特別に変わったアクションをするということはあまり意識していません。作家さんに実際に来てもらってワークショップや特別授業などの機会をつくることもありますが、生徒が主体的にできるきっかけを作ることが大切です。多様な生徒が活躍できるような環境を授業内外で創っていく。授業の中では変わったことをせず、意図的で目にするきっかけの少ないような作品を見せることや基礎的なワークに重点を置けるのも、生徒にとっての環境づくりが大切だという思いがあるからです。

 

―生徒がどのように活躍できるかを意識するということですか?

倉本先生:学校で授業をやっているのだけれど、この子たちがデザイン会社の職員だとしたら、一人ひとりをどんな仕事でスカウトできるだろうか、という感覚に近いです。映画も、画面に映らないところでさまざまな仕事があって成立しています。いろいろな取り組みに適した才能を発掘するという感覚です。

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―授業の中でも、学校の外部でのような視点も持つということですね。

倉本先生:授業の性質として、モノを作る機会が多いんです。そのモノで表現できるようにするために、自分が何を考えているか、常に意識しなければなりません。さらに、それを自分の言葉で表現できるようになる、カラを破るための経験を授業でも与えたいです。なので、機会を見つけて外部の人とコミュニケーションをとるように仕向けていきます。例えば、画像編集ソフトの入門として、自分の名刺を作成することがあります。名刺のデザインではなくて本物を作成するんです。それを200枚印刷して、友達同士ではなくて学校の外部の人と名刺交換をするように促したりしています。環境づくりのためには、応援してくれる方や学校の内外を橋渡ししようと考えています。色々な人とネットワークを作り、フレッシュでいることを私たち自身も楽しんでいます。

―モノをつくることで終わりではないのですね。

倉本先生:将来は美術やデザインを活かした仕事に就く可能性を考えると、そうしたリアルなものに触れる機会があればと思います。本当は、美術系の学校は絵が描けなくても、おもしろいことができるんです。自由な学問に開かれています。

 

―最後に、生徒には10年後どのようになっていて欲しいとお考えですか?

倉本先生:自分の中で、夢を実現したい、経験したい、やりたいと思うことを探して、それを実現できるようになっていて欲しいですね。

 

―イメージの共有を通してアイデアを生み出すという本時の授業は、先生のそうした思いに結びついているんですね。本日はありがとうございました。

 

 

東北生活文化大学高等学校の歴史は、1900年に創設された東北法律学校、その3年後に創設された東北女子職業学校にまで遡ることができる。戦後の学制改革により、1948年に三島学園女子高等学校となり、2003年からは共学制の東北生活文化大学高等学校と校名を改称した。建学の精神である「励み・謹み・慈み」は、今日においても受け継がれている。

  • 取材

    堤 ひろゆき

  • 撮影

    松尾 駿

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