マナビラボ

第1回 15歳の未来予想図

2015.12.16

「どうやって自分が頑張れる
ポジションを探すか」
為末大 x 中原淳(前編)

100m走日本一からハードルに転向した高校時代

ラボ長の中原が、教育に熱意のある著名人の方をお招きして「これからの社会」や「これからの教育」について、ざっくばらんに語り合います。

第1回目のゲストは、オリンピックに3度の出場を果たした元陸上選手、為末大さんにお越しいただきました!日本一に君臨した中学時代から一転して、高校時代に経験した挫折。新たな舞台で掴んだ功績と、スポーツにおけるシビアな「勝ち負け」の現実について伺います。

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中原: こんにちは15歳の未来予想図というコーナーになります。
15歳の未来予想図は、今15歳の高校生たちが、今後5年とか10年経ったらどんな社会になったり、どんな働き方をしたり、どんな学び方をしたり。
そういう未来を識者の方々をお呼びしてですね。
ゆるく議論していこうかな、と。
そういうコーナーになります。今日は元アスリートの為末大さんにお越しいただきました。
どうぞよろしくお願いします。為末: よろしくお願いします。

中原: では早速ね。
ちょっと為末さんとゆるくお話を。
こんな会場なんで、ゆるくしていきたいなんて思うんですけれども。

為末: はい。

中原: まず、
これを観られている方は、高校生とか、高校の先生とか
高校に関連している方が多いんですよね。

為末さんは、どんな高校時代をお過ごしになったのか?
みたいなところからちょっと伺っていきたいんです。

為末: なるほど、これですね(質問カードを見ながら)。

中原: どんな高校時代?

為末: まあ僕はもう小学校からずっと陸上やってるんで。
小中高で。中学校で日本一になっているんですね。
だから高校のときにはもう結構期待されてる感じだったので
陸上漬けの毎日ですね。

学校の授業はあまり覚えてないんですけど
国語の点数だけすごい良くて
あとは全然ダメだったんですけど。

そのくらいですかね 、覚えていることといえば。

高校3年生くらいになったら ちょっと成績が出るようになってきて、
初めて日本の外に試合に行ったりとか。
そんな経験をした時代ですね。

中原: どのくらい…うーん ぼくは運動会って言ったらもう
ちょっと、限りなくビリに近いんだけど(笑)
どのぐらい練習してたんですか?

為末: どのくらいって言えば…。
まあ 高校なので制限があるんですけど
朝6時半から8時とかかな、朝練習で。
そのあと授業をやっていて、授業終わったら
3時40分とか4時くらいから練習をはじめて6、7時くらいの感じですかね。
1日2回の3、4時間くらいですかね 長いと。

中原: 練習の合間に入ってくる感じになっちゃいますね、授業が。

為末: そうですね。
だから練習の合間に学校があるみたいな感じでしたけれど。

まあ、ひとつ、でも高校時代に大きな経験だったのは
自分の人生が中学校くらいまですっごい勢いで成績が伸びていって、
中学3年生のときの方がね、実は僕 世界ランキングで中学3年生のときが一番高いんですよ。

そのあとに、身体が身長が伸びなくなっちゃってきて。
高校時代には身体のサイズが ほとんど変わらなかったんで、
陸上みたいな、ああいう競技って、もう体力が結構大きいので

中原: それは身長とかそういうこと?

為末: ええ、筋力とかですね
だから、そのくらいから成績が伸び悩んできて
高校時代ってあんまり、なんていうか、気持ちよく走ったというより
「だんだん他人に追いつかれる!」みたいな焦りの3年間っていう感じでしたよね。

中原: ちょっとね。為末さんのご経歴を見させてもらったら
その時代に競技を変えてますよね。

為末: ああ、そうです。
ハードルに僕はそこで移って…。

中原: そこで僕は読んでいたとき、見ていたときにね。
すごく思ったんだけど、今まで100mとか200mでやっていて、
400mに変わるとかって、結構厳しいんですか?
つまり、これって相当の転換だと思うんですけど…。

為末: まあ、人によるかも…。
一番大きかったのは価値観ですよね。

中原: 価値観?

為末: なんとなくね、100mってど真ん中なんですよ。

中原: どういう意味ですか?

為末: なんて言えばいいのかな。
えっと、4番でエースなんですよ。

中原:4番でエース。

為末: ええ。
サッカーとかどこが中心かわからないですけど、まあ ミッドフィールダーとかなのかな。
要は、一番花形のところから、厳しくなったんで、別のポジションに移るみたいな感じなんですよね。

400mハードルというと競技人口も圧倒的に少ないので、
400mハードルにいくとマイナーの方に流れていくという感じなんですけど。

そうすると、まあ、世間的な見方と自分の中の価値観のなかで、こう、
「中心で勝てなくなったからマイナーに逃げる」という感覚と、
だけどまあ、「こっちに行けば勝負できるかもしれない」という。
そのへんの、高校生ながらの、なんていうんですかね…。

中原: 結構厳しいですね。

為末: ええ。
まあ、なんていうんでしょう。
枠が限られているものって、もしかしたら研究とかもそうかもしれないですけど…。

中原: ああ、まさにそうですね。

為末: どうやって自分が頑張れるポジションを探すか、
っていうのをやらなきゃいけない時が来るじゃないですか。
それが18の時にきて。
そのことですごい悩んだことを覚えていますけどね。

中原: 研究者の位置取りも、みんながものすごく頑張ってやっている、
レッド・オーシャンっていうか。そこから、いかに自分の能力とか、
あるいは価値を発揮できるブルー・オーシャンをね、
見つけていくかっていうのが大変だと思うんですよ。

為末: そうですね。

中原: こっちに移っちゃったら、ある意味でもう…。

為末: 戻りにくい。

中原: うん、戻れないし。
どうしようかな?とかっていうときがあると思いますけどね。
それを高校生で経験するって、結構大変だなって思いますよね。

為末: あと、ちょっとだけ特殊だったのは、
レッド・オーシャンのど真ん中のチャンピオンだったのが、
2番3番になってブルー・オーシャンっていう世界なので、何かちょっと
パッと入ったら、ここはたくさんライバルがいるから違うところへ、っていうのともまた価値観が違って。
なんていうんですかね。

中原: なかなかしょっぱい人生ですね。

為末: そう。
だから、あんまり外から見えているのはあれかもしれないですけど、
そのときの選択はすごい、なんていうんでしょう。

自分の輝けるかもしれない確率が低い真ん中にいるのか。
それとも、まあ若干ライバルは少なくて勝てるかもしれないけど、
ちょっと世間的にはあまり知られていないとこでやるのかっていう。

どっちを自分はやるんだろうか?と考えたっていうのが 大きかったですね。

中原: そのときって、ご自身ひとりでね。
ある意味、結構生き方とかキャリアの選択に近いかもしれないな、と思って聞いてたんだけど。
自分ひとりでパーっと決めれるものなんですか?
それとも誰か、先生とかと話し合って決めるのかな。

為末: まあ、先生ともちょっと話しましたね。

ただ、ほとんどは自分のノートに整理してみて、
100mやった場合の人生と、400mハードルやった場合の人生とを書いて。
まあ、いろいろ、いいことも悪いこともあるんだけど、どっちをやりたいかっていうのを。
それが一番基準になったんですけど。

まあ、とはいえ、先生に話をしたり、あとは案外、
一緒にやってるチームメイトと話しましたけどね。

ああ 外から見て僕の能力は何に見えるかっていう。
そんなことを聞いて。

中原: 外から見て、ね。
誰かから見た場合に、誰かを鏡にしながら自分がどう見えているのかっていう。

為末: そうですね。
「思ったより粘り強くやるタイプだよね」とか。
「瞬間的にやるよりもね」とかなんとか。いろいろとそんなことを言われたりして。
性質と競技が合うかどうかもあったりするので、
そういうことを考えながら、まあハードルかなっていうので決めたと。

中原: その後はハードルに移られてどのようなご活躍をされていくんですか?高校時代。

為末: 高校は、高校3年の時にハードルに移って。
いきなり一発目ですごいうまくいって。
それでかなり迷いが吹っ切れて、これでもう生きていこう、というので、大学に入って。

そのあともハードルを続けますけど、やっぱり一発目の試合は大きかったですけどね。

中原: めっちゃ緊張しました?(笑)

為末: 緊張しましたし、あとは複雑…。
なんていうんですかね。

まあ、これは大人になってさらに感じるようになったんですけど。
もうすでにそこの世界では ハードルのチャンピオンがいたんですよ。
一番仲よかった子なんですけど、それを蹴っ飛ばして僕は入って。
その後、彼は僕に勝つっていうのを目標に10年くらいやるのかな。
で、結局1回も勝てなかったんですよ。
彼はそれで引退していくんですけど。

スポーツの世界ってそういう…1枠しかないんで。
それを誰がとるか、頑張っても誰かひとりみたいな。
そういうのでドラマがあったりするんですけど。

中原: ちょうど仲が良かった子なんですよね。

為末: 仲良かったですね。

中原: これはしょっぱいな。

為末: そう。だからね…。

中原: 彼から見たら「え、お前来るのか?」みたいな。

為末: まあ、それもあるでしょうし。
でも1回やられたら もう絶対もう1回取り返すんだというのもあって。
でも彼はすごい、なんていうのかな、スポーツマンって感じでしたね。
それで結構すがすがしくいつも戦っているという感じでしたけど。

まあ、そのような感じで、高校のときには結構いろんなことを経験したなって感じがしますね。

(中編へ続く)

  • 取材

    中原 淳

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