マナビラボ

第37回

2017.08.30

授業デザインをめぐる格闘

「伝えたい気持ち」を支える英語の授業(後編)

生徒一人一人の「伝えたい気持ち」を、内容面・技能面の両方から、深め、支えていくために、英語の授業のデザインに日々格闘している、神戸市立葺合高等学校の宮崎貴弘先生。授業後、宮崎先生にお話を伺った。

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「伝えたい気持ち」になる授業 

−−先生の授業では、生徒たちが英語で表現することにあまり躊躇や抵抗を感じていないように見受けられましたが…

宮崎先生:「英語」といえども「言葉」ですから、そもそも、伝えたいことがなければ使う必要がないのです。「伝えたい気持ち」にさせることが重要だと考えています。そのため、授業の中に、意見の違いが生まれる活動を意図的に取り入れるようにしています。たとえば、Why? やHow?など、意見の違いが出やすい発問がそれです。

また、授業の中で、生徒一人一人が自分の意見を発表する時間を必ず確保するようにしています。重要なことは、生徒が自分の意見を持ち、自分の意見を発表する、ということだと思います。

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−−生徒一人一人の「伝えたいこと」の違いを大切にされているようですが、こうした授業をはじめたきっかけについて教えて下さい。

宮崎先生: 数年前までは、生徒が、英語でうまく表現できないという経験をしないために、教師が全部を準備し、その準備した範囲の中で、授業をすすめるのがよいと思っていました。しかし、失敗や「できない」という経験も大事なのではないか、と考えるようになったのです。おだてられ、ほめられるだけではダメなのです。「できる」ようになるためには、努力が必要です。与えすぎてはいけない、と考えるようになりました。

私の授業の中では、生徒一人一人が自分の意見を持つことを大切にしています。そこで出てくる意見の違いというものは、生徒それぞれの「価値観の違い」であり、「学習の偏差」を示すものです。この「学習の偏差」はあった方が面白いと思っています。「学習の偏差」は、単に、「できるか・できないか」ということを示しているのではありません。「学習の偏差」があることによって、教え合ったり助け合ったりする活動が可能になってきます。

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「伝えたい気持ち」を支える仕組みをデザインする

−−授業の中のペアワークで、話し手の声に耳を傾けて前のめりになったり、話し手の言葉を少しでも引き出そうと手招きのようなジェスチャーをしたりしている聴き手が印象的でした。

宮崎先生:確かに、グッド・スピーカーを育てるためにはグッド・リスナーが重要だと言われます。話し手を育てるには、聴き手への指導が不可欠ということです。

生徒たちに対話のペアワークをさせると、機械的なやり取りで終わってしまうことが少なくありません。そのような時は、聴き手として、どのように振る舞ったらよいか、考えさせるようにしています。たとえば、今日の授業でいうと、レスポンスやリアクションについての指示はその一つです。

また、そもそも、どのような発問が、生徒たちに響くのか、発問の設定には苦心しています。職員室で近くの席の先生に「こんな問いはどうでしょう」と相談を持ちかけることも少なくありません。実は、今日もぎりぎりまでこの発問でいけるのか、考えていました。

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−−聴き手の生徒たちが、前のめりになったり、手招きのジェスチャーをしたりする陰には、発問の設定をはじめ、授業デザインをめぐる、先生の日々の試行錯誤があるわけですね。他の先生に相談する、と仰っていましたが、発問の設定の他にどのようなことを相談していますか。

宮崎先生:英語科では、学年での到達目標を設定し、週に一度、教材や生徒の学習状況について打ち合わせをしています。英語科以外の教科ですと、最近は、国語科の先生と有志で学習会を実施しました。

教科間連携というと、もちろん内容面での連携も重要ですが、技能面での連携も同様に重要だと考えています。教科の枠を超えて、そもそも「生徒にどのような力をつけさせたいのか」を共有することが必要だと感じています。たとえば、英語科でも国語科でも同様に「生徒が文章を書けない」という問題意識や、「生徒に書く力をつけさせたい」という共通課題が出てきました。

生徒それぞれの「伝えたい気持ち」を支える具体的な技能をどのようにして身につけさせることができるのか、これまでのそれぞれの教科での取り組みを振り返りつつ、具体的にどんな取り組みが可能か、研究中です。

はじめは英語科と国語科の有志による自主的な研究会だったのですが、社会科の先生が学年全体での企画を提案してくださりました。

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「伝えたい気持ち」を深め、支える、「対話」へ

−−先生の今後の課題を教えて下さい。

宮崎先生:課題は、「やり取りする力」を身につけさせることです。

生徒たちの多くは、形式的な発表はできますが、それは「対話」ではありません。「対話」をする中で、言葉を使って実際にやり取りをし、知識や技能は身についていくのだと思います。

そうだとすれば、自分の意見を持つということは、「対話」をしていくための基礎になっているのではないでしょうか。生徒一人一人が、思考力を高め、自分の意見を深めていくことは、「やり取りする力」、「対話」につながっているのだと思います。

生徒が思考の精度を高めていくためには、教師が「手を入れる」必要があります。「活動はあるけど、指導がない」というのではなく、生徒に必要な力を身につけさせるために、具体的にどのように「手を入れる」ことができるか、指導について模索していくことは今後の課題です。

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−−ペアワーク中、聴き手にまわった生徒の「話、つづけてや」という言葉がとても印象的でした。もっと君の意見を聞かせて欲しい!話し手の「伝えたい気持ち」を支え、それを共に深めていこうとする姿勢は、生徒たちに確実に身についてきているのではないでしょうか。「やり取りする力」、「対話」の素地を垣間見ることができた気がしました。

本日は本当に有難うございました。

 

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神戸市立葺合高等学校は、1939年に現在の校地に開校した神戸市立神戸中学校(旧制)の流れをくみつつも、1949年に普通科と商業科の2つの学科を設置した新制高校として発足した。現在は、普通科と国際科の2つの学科が設けられ、「自主の人たれ」「創造の人たれ」「世界の人たれ」という教育方針を掲げた教育活動が行われている。

 

 

 

  • 取材

    渡邉 優子

  • 撮影

    田中 智輝

  • 撮影

    村松 灯

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