マナビラボ

第10回

2016.05.04

考え方が変われば、プレーが変わる
対話を通して思考を促す

上野山信行 x 中原淳(前編)

ラボ長の中原が、教育に熱意のある著名人の方をお招きして「これからの社会」や「これからの教育」について、ざっくばらんに語り合います。

今回のゲストは、ガンバ大阪で「選手の養成」や「指導者の指導」に当たられている、上野山信行さんです!

今回は、ご自身の指導の基本的な姿勢について、お話くださいました。
「目標」と「ポイント」を伝えたうえで、本人にやらせてみて、失敗をした際には「質問」を通して本人の思考と理解を促す。そんな一見シンプルな指導法を、驚くほど徹底していました。

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中原:未来を育てるマナビラボ、『15歳の未来予想図』ということですね。

きょうは、上野山信行さんにお越しいただきました。どうぞよろしくお願いします。

 

上野山:よろしくお願いします。

 

中原:上野山さんは、ガンバ大阪でサッカーの指導者とかコーチの育成っていうお仕事になさっているというふうに聞いていますけども、それで大丈夫ですよね。

 

上野山:はい、大丈夫です。

 

中原:これまでにも、ヨーロッパや世界で活躍なさっている、宮本選手ですとか、あと稲本選手とか。いろんな選手をサポートなさったというふうに聞いております。

きょういろいろ伺いたいのは、『日本のメッシの育て方』という上野山さんの本があるんですけれども、こちら、僕、拝見してものすごい感銘を受けたんですよ。

 

上野山:ありがとうございます。

 

中原:というのは、実は恥ずかしながら、僕は体育(の成績が)2でね。サッカーもすごく苦手で、スポーツって僕から最も遠い世界のように感じたんですね。

どういうことかっていうと、例えば、「根性だ」と。「精神だ」と。とりあえず、「言葉」とは無縁にあるような世界で、体を動かすことがスポーツなんだと僕は漠然とイメージしたところがあって。本当に今から考えれば、誠に申し訳ないんですけども(笑)、この本を読んで、「あっ、全然違うんだ」って思ったんです。

上野山さんのご指導っていうのは、子どもとか選手に「考えさせる」っていうことをめちゃくちゃ重視なさっていると思うんですけど、そのあたりのことについて(伺いたい)。子どもを考えさせるためには、どんなことに気をつけたらいいのか、どんな言葉掛けをなさっているのか、ということを伺いたいなと思うんですが。

 

上野山:一番は、「質問を多くすること」ですよね。

 

中原:質問を多くする。

 

上野山:質問でも、やっぱり「詰問」になると良くないので、考えるような質問をしてあげる、適度な。

あとは、選手が質問を受けて黙ってるとき、沈黙がありますよね。そのときも、「答えを急がずに待っている」っていうことが大事かなって思いますよね。

 

中原:例えば、シュートうまく決まんない子とかがいて、「ちょっと来い」、「何で決めないんだ」っていうふうに言うんじゃないってことですかね。

 

上野山:そうですね。「どうして決まんなかった?」、「なぜ決まんなかった?」「問題は何か?」と、原因分析ですよね。それをしてもらうってことですよね、子どもたちに。

 

中原:なるほど。それは、試合を止めてやるんですか?

 

上野山:そうですね。シュート練習はもうシュートだけのことなので。ローテーションでやっていますから、個別に終わったらこっちへ帰ってきますので、そのときに問いかけできます。

試合のときは、止めたり、あとはシンクロでやりますね。手法は若干変わってきます。全体練習と個別練習で変わってきます。

 

中原:例えば、あんまり詳しくないので申し訳ないんですけど、パスをしてシュートするみたいなのがあるじゃないですか。要するに、チームでボールをつないでいくみたいなシーンがあると思うんですけど、そういうときの指導はどういうふうになさるんですか?

 

上野山:まず選手を集めて、三つのこと言います。一つ目は、「きょうのゴール」ですね。「目的は何でしょう?」ということ言いますよね。例えば、シュートを入れるのなら、「シュートを入れる練習をしましょう」と言うことになりますね。

次に、「ポイント」を言います。ポイントは、ボール止めること。しっかりシュートを蹴る前にボールを止めて、どこに入れるかというのを確認してからボール蹴る、ということがポイントだということを説明します。

 

中原:それは、ちゃんと説明なさるんですね?

 

上野山:はい。そのポイントを「考えて、やらす」ということです。それが、できる要因ですよね。成功要因ですね。それを与えとくということです。

 

中原:なるほど。ただ、うまくいかない場合っていうのも出てきますよね?

 

上野山:そうですね。じゃあ、うまくいかなかったねっていうときに、「ポイント何だった?」って言って、「三つあったよね。何?」って聞いたら、「僕は軸足が良くなかった」って言いますよね。そのポイントを(本人も)分かってるんで。それを聞いて、「オーケー、そうだ」と返すことで、本人が考えるということです。

 

中原:本人に悪いところをガーって叱るんじゃなくって、「本人に考えて言わせる」っていうことなのかな……。

 

上野山:そういうことですね。「きょうの成功のポイント、何やったかな?」「何が出てたかな?」って聞く。「1番は……2番は……3番は……」って考えると、「2番ができてない」(と気づく)。「じゃあ、それを次やってごらん」とかって言う。そういう対話をするっていうんですかね。

 

中原:それは、プレーを常にコーチの方が見られているわけですが、「あいつ、ここが悪かったな」っていうのは上野山さんの中では把握できているんですか?

 

上野山:一応その要因は(把握して)持っていますけど、その要因はそのプレーとは直接関係ないので、そのプレーをした瞬間の、できなかった原因を瞬間的にこっちで出します、仮説を立てて。

 

中原:なるほど。ご自身では(把握して)持っている。

 

上野山:(できない理由となる)要素は(把握して)持っていますけど、そのプレーとは関係ないので、全く。そのプレーを見たときに、「これだ」っていう原因を出していきますね、自分で。仮説で三つから五つ立てていきます。どうかっていうことを(コーチ側が)見抜いて、(いくつもある、できない理由となる)要素を一つ(選手のもとに)持っていって対話をするって感じでね。

 

中原:なるほど。そうすると、結構グランドの上で話していることが多くなるっていうことですかね。

 

上野山:話は、そんなに長くないです。シンプルが一番いいの。一応、指導法では、「クイック・トゥ・ザ・シンプル・ポイント(Quick to the simple point)」って言うんですけどね。単純にやりとりを、「はい、はい、はい」って感じでやる。プレーをたくさんやらさないと、うまくならないので。選手は話を聞くよりもプレーしたいんですからね。そこは簡潔にやらな駄目ですね。

 

中原:プレーは一番の重点に置きながら……

 

上野山:プレーはたくさんやらして、指導のポイント、注意のポイントは「端的に、素早く、納得できるように」するっていうことですね。

 

中原:そこでは、いろんな発問をしていくってこと。

 

上野山:そういうことですね。

 

中原:なるほど。それは結構、言葉を使う指導法なのかなと思うんですけど。

 

上野山:そうですね。

 

中原:そんなふうに上野山さんが(指導しようと)思われたきっかけって何かあるんですか?

 

上野山:言語っていうのは非常に大事だと思っていて。言語のことって脳で考えますから、その言葉が脳でどういうふうな考えを持つかによって、行動が変わってくると思っています。選手にもその言語で話をさせてやると、刺激しやすい。その辺のことですね。(選手の)考え方を変えたいっていうのが一つの目的です。それが変わるとプレーが変わると思ってますから。

 

中原:「考え方が変われば、プレーが変わる」。

 

上野山:プレーが変わります。

 

中原:「考え方を変えるためには、自分で分かんなきゃなんない」っていうことなんですかね?

 

上野山:そう思いますね。答えを教えちゃうと、考えませんから。その瞬間はできても、サッカーっていうのはいつも同じプレーじゃないんですよね、状況は。常に変わってくるんですよね。

 

中原:そうですよね。同じ試合なんてないですもんね。

 

上野山:ないんですよね。それが、答えを教えちゃうとそれしかできないことになるので、(選手が)他のミスをしちゃうと、指導者は、「さっき言ったでしょ」ってなっちゃうわけですよね。

サッカーにはいろんな臨機応変性があるから、子どもが、「このときはこう考える」、「こんときはこう考える」っていうふうにやってかないと、ロボット化して、選手の成長はないと思いますね。あくまでも、何でも型に決まっちゃうっていうんですか。

 

中原:言われた通りのことをやっていくロボットみたいな選手になっちゃう。

 

上野山:なっちゃうと思いますね、はい。

 

中原:しかも、その試合は同じものはないってこと……。

 

上野山:ないと思いますね。めったに出ませんね。

 

中原:なるほどね。

 

(中編へ続く)

  • 取材

    中原 淳

  • 撮影

    松尾 駿

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