マナビラボ

第3回

2016.04.27

かわいがるために全力を尽くす
−動物を通して人を観る−

大阪府立農芸高等学校 資源動物科ふれあい動物部

豚からデグー、ポニーやアルパカまで、13種類100個体以上の動物を飼育管理する、大阪府立農芸高等学校資源動物科のふれあい動物部。動物介在教育(Animal Assisted Education)の普及を目的として、幼稚園や小学校、児童養護施設、高齢者介護施設などに動物を連れて行き、「動物との正しい接し方」や「命の大切さ」について考えるきっかけを提供している。

 

現代の子どもたちが、日常生活で、生きている牛や豚に接する機会はそれほど多くない。普段の生活で食事に出てくる動物ですら接する機会が少ないのだから、犬や猫といったメジャーどころ以外の愛玩動物に接する機会は、さらに少ない。しかしながら、牛や豚といった家畜のみならず、珍しい愛玩動物に日常的に接することができる学校がある。農業を専門とする高等学校だ。なかでも、大阪府立農芸高等学校(以下、農芸高校)は、資源動物科のふれあい動物部において、国内でも非常に珍しく、アルパカを飼育している。現在、アルパカを飼育している高校は国内でも唯一。もちろん、世話は正課の一環として生徒が行っている。

 

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農芸高校は、ハイテク農芸科、食品加工科、資源動物科の3科を擁している。そのうち、資源動物科にふれあい動物部がある。ふれあい動物部では、動物を愛玩用として飼育し展示することが目的となっているので、生徒は動物が天寿を全うするまで世話をする。飼育しているのは、ポニー、アルパカ、スナネズミ、デグー、羊から蛇まで多様だ。一頭一頭に名前をつけ、各種ごとに担当を決めて面倒を見ている。担当する種類は1年で変わってもよいが、3年間続けることもできる。やはり、やりはじめると愛着がわく。同じ種類を続ける生徒も多いという。

生き物の世話に休みはない。農芸高校でなければ普段触れることの少ない動物の日常の世話をするのだから、入学当初の高校生たちには経験値もない。1年生から3年生まで仕事の分担量は同じくらいだというが、慣れという意味では大違い。お話を伺った高校3年生の井場さん、栁川さん、奥山さん(2016年1月28日当時)は、「1年生の最初は世話をするのもなかなかたいへんでした」と口を揃える。1年生の夏休みは2日に一度登校して世話をした。それでも、「ふれあい動物部の中で、生徒同士での知識を伝え合う」ため、先生よりも生徒の方が動物の世話は得意になっていく、とふれあい動物部顧問の藤田和久先生はいう。動物の世話を日常的にしていくことで、「動物をかわいがるだけじゃない。世話が大事」(井場さん)ということに気がつく。「死んでしまったとき、あのときこうしていあげれば、もっと……とか、しっかりしないと、と考える」こともある。

 

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辛いことばかりではない。「3年生になってから、一人でいるときに、モルモットのお産に出くわしました」と栁川さん。突然のことで驚いたとのことだが、1、2年生のときに動物のお産のことを授業で教わっていたため、一人で対処することができた。「知識を活かして成功しました」。

授業で習う知識は、世話をしている動物に関わる場面で実際に活かされることが多い。やながわさんが飼料や牧草の授業で「本日の毒草」として先生に毒草のことを教わっていたときのこと。世話をしていた羊の一頭が、突然吐いてしまった。おかしいと思い餌を調べると、授業で習った毒草が紛れ込んでいたことがわかったという。それからは、牧草といえどもなにか混入してないかちゃんと目を向けるようになったという。豚の解体についての授業では、解体だけではなく加工品を作ることもある。自前の肉を使った食品と、普段食べているものとの味の違いに、普段の自分たちの食にも目を向ける。

ふれあい動物部の前身は、実験動物の飼育について研究する目的を持っていたコースだったという。それが、30年ほど前の先生が愛玩動物の飼育と、動物とふれあうことによる「動物介在教育」を目的とする「ふれあい動物部」へとつくりかえた。人々と動物のふれあう場を創り出し、それによって様々なことを伝えていこうという「動物介在教育」を目的とする今のふれあい動物部の最大の目標は、「動物をベストな状態でふれあいの場所に連れて行くこと」。

 

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とはいえ、移動動物園での活動だけがふれあい動物部の活動ではない。農業高校では「プロジェクト」と呼ばれる様々な試みを生徒主体で行っているが、ここ農芸高校でも多様なことが研究されている。日々の生活で動物と接している中で、なんとなく疑問を感じたことを調べていき、さらに興味が深まればプロジェクトとして研究するという。例えば、あるプロジェクトチームでは、紙の再利用の際に草食動物のフンを利用した紙漉き体験などの場を提供している。動物を飼育していれば日常的に接するが、そうでなければなかなか触れることのないフンを通じて、動物との距離を縮めることができる。また、何年間も継続して行われているプロジェクトでは、生徒の間でも技術の蓄積と継承がなされている。他にも、羊の毛刈りをして羊毛を製品化するプロジェクトも活動している。

これらのプロジェクトの目的、技術をそのまま後輩に伝えていくことではない。例えば、奥山さんいわく、プロジェクトでやっている紙漉きが上手くいかない時期があったという。そこで、外部の専門家のもとを訪れて研修してみると、プロジェクト内で伝えられてきた工程がどこかでまちがっていたことがわかった。そこで生徒たちが気づいたのは、技術の継承は日々ずれてしまうものだということ。また、羊のプロジェクトでは、受け継いでいたやり方を少しずつ変えることで作業時間の短縮が可能になった。

 

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ふれあい動物部の活動として学校外によく知られているのは、移動動物園である。日帰りで行ける範囲で小学校や保育園、幼稚園などに出張し、人々と動物のふれあう場を作る。企画・運営も基本的に生徒たちの仕事だ。日程調整から希望の動物やアレルギーについて依頼主に聞く打ち合わせまで、生徒が行う。移動動物園は、「動物介在教育」を実践するだけではなく、動物とふれあう人と生徒とのふれあいを通した学びも生徒たちに促してくれる。動物にも人にも接することで見出される大切な学びの契機。それは、かわいがるということに本気で向き合い、全力で取り組むことで生じている。

  • 取材

    堤 ひろゆき

  • 撮影

    松尾 駿

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